Report みんなでごんぎつねプロジェクト

子どもの言葉にとって今、一番の問題は地域社会の崩壊ではないかと感じています。かつて冠婚葬祭の折りなどには、地域の幼子からお年寄りまで異年齢の人々が一堂に会し、様々な言葉を交わしました。そんな中で子どもは人間を観察し、言葉を覚えました。しかし今はそんな場も機会もなくなっています。私は、子どもの言葉を育てるには、まず地域での人々の繋がりを取りもどすことから始めなければならないと痛感するようになりました。

愛知県・半田市の「新美南吉記念館」から、新美南吉の生誕100年を迎える2013年、半田市の記念事業として朗読会を開きたいとの申し出があっりました。そこでスタートしたのが「みんなでごんぎつねプロジェクト」です。

半年前から準備の勉強会をスタート

地域の大人と子どもが一緒になって新見南吉の作品を朗読するための勉強会を開き「ことばの杜」が指導することに。半田市内の13の小学校から学年の違う児童が2人ずつ。大人は市内で30年以上活動を続けている朗読グループ「きりんの会」の20代から70代までの6人。小学校の先生2人、NHK名古屋の現役アナウンサーらが参加しました。

2013年1月20日キックオフ

半田市内のさくら小学校の大教室で顔合わせ。そして地元出身の作家の作品を朗読することの意味をオリエンテーション。

2月から月2回の勉強会

月2回の勉強会が始まりました。参加する児童と大人が軽く体操や発声、発音の練習、「ごんぎつね」についての解説や朗読の基本をトレーニング。
一グループを年齢が異なる5~6人で構成。一人一文ずつ読みながら意味のわからない言葉を洗い出す。白板に書き出し,全体で考えたり、わからないことは宿題に。意味がわからないと朗読はできないことを学んでいきました。

遠足、宿題、年齢の異なる参加者が

新見南吉ゆかりの場所を訪ね歩く遠足などを経て、本格的に読む作業に入っていきました。同じ地域の、大人から子どもまで年齢の異なる参加者たちが、言葉を介してつながりあう。子どもにとっても、大人にとっても、言葉について考える貴重な場になりました。

2013年7月27日 発表会

そして、いよいよ発表会。定員1300人の雁宿ホールの舞台へ。
半年かけて読みこんだ「ごんぎつね」や、南吉の詩などを、みんなで読みました。
満員のお客様たちは、水を打ったように静かに聴き入ってくださいました。